その記事を目にした途端、居心地が悪くなった。
報道に感情を混ぜんじゃねぇよ。
イラクで日本人が殺害されたんだってね。
うん、事件だ。大事件かもね。一大事っぽいや。
でも、その事件を報じたある新聞はデカデカと見出しに「惨殺」という言葉を。
ムカつくいたんだ、俺は。
首がちょん切られてたってね。だから何？
殺された人は可哀相さ。
殺された人の家族だって可哀相さ。
そんなことは理屈でも感情でもわかってんです。理解できます。
実感はできないけど。
事件を報じることは大切かもしれない。
詳細を記すことも重要かもしれない。
でも、
「惨」とは、いたましいさま・むごたらしいさまって意味じゃん。
いたましい、とか、むごたらしいとかってのは感情だ。
それは受け手側が感じることであって
公の立場で報じる側が与えるもんじゃねーだろ？
俺の操縦士は俺だ。
俺の感情は俺のもんなんです。
何で、他人様から押し付けられなきゃならねーの？
だから釈然としない。
そして、そんな報道をするメディアを滑稽に思うんです。
爆笑だ。なめられてるんだね俺。
井の頭公園で知り合った中東系な兄さんは
ハンマードダルシマーの音色を聴いて
「故郷の音がします」って言って、優しい目をしたよ。
此処じゃない心の中の遠くの方を懐かしそうに見てたよ。
ふつーの兄さんだったぜ。
俺よりきっとまっとうだったぜ。
その兄さんと事件後偶然再会したとき
兄さんは「ごめんさない」って言ったんだ。個人なのに国を背負ってたよ。
自分がやったわけじゃないのに。
兄さんは「わたしたちが怖いですか」とも聴いてきたよ。
自分はぜったいそんなヤツじゃないってわかってるのに。
いろんなところでこうやって謝ってんだろうなって思ったよ。
いろんなとこでいろんな誤解受けてるんだろうなって思ったよ。
感情を弄くるんじゃねぇよ。オモチャじゃねぇんだ。
報道に感情を混ぜるんじゃ、ねぇよ。
BGM"let your soul be your pilot" by sting
